barrierfree
介護・介助する人も、される人も、よけいな気を使わずに快適に、楽しくくらす。そんな「心のバリアフリー」が成り立つ空間こそが、真の意味でのバリアフリー住宅ではないでしょうか。自立や活力を促すようなポジティブな設備や工夫は、千差万別。人も障がいも、家の事情もそれぞれ違います。もっと言えば、あえて「バリアを残したバリアフリー」を。阿部建設では、バリアフリーを必要とする方の潜在能力を高めるフルオーダーを承ります。
吉田憲司さんと出会ったのは、阿部建設社長の阿部一雄の入院先。ふたりは奇しくも同じ時期に事故に遭い、同じ病院に入院していたのです。競輪選手として活躍されていた吉田さんにとって、足は命のような存在だったはず。それが車いすの生活を余儀なくされることになったのだから、落胆はとりわけ大きかったことでしょう。
吉田さんがすべてを任せてくださったのは、車いすの生活という新しい人生を始めることになった同志だったからかもしれません。「阿部さんも同じような思いをしているから、何を話してもすぐにわかってくれ る。自分のことをなんでも話せるというのは大きかった」と吉田さんは振り返ります。住まいづくりの打ち合わせが気持ちのリハビリにもつながった、とも。
吉田さんは競輪場で初心者ガイダンスの仕事や、小 ・中学校で福祉の実践教室の担当、そして小学校のPTAの会長もされています。「たいていの人は(その体で)大変ですね」と言いますが、阿部さんは違う。かっこいいですねえ、と言ってくれるんですよ。この前向きさが、私にも元気をくれていると思います。私だって、落ち込んでどうしようもない時もある。でも、それが人間本来の姿だと思うし、またしばらくしたら前を向いて歩き出せばいい。そんなふうに考えられるようになったのも、阿部さんの影響が大きいと思います」と吉田さん。
「主人は自分のことは自分でやってくれますから、事故の前と生活は変わっていないんです。いくら夫婦でも、いつもやってもらってばかりでは負い目になると思いますが、おかげでこの家ではそういうことがない。主人もきっと、気持ちが楽なんだろうと思います」とは、吉田さんの奥さまの弁です。「いまでも快適に、楽しくくらしています。不自由を感じることはほとんどありません」。この家で毎日を過ごし、日々を重ねたうえでの吉田さんのこの言葉に、建築した成果が集約されているのではないでしょうか。
吉田さん専用の玄関から昇降機で上がると、寝室につながるスペースが。ここで室内用の車いすに乗り換えることができます。
既存のトイレの横に、吉田さん専用トイレを増設。家族それぞれが違和感なくトイレを使えるうえ、全部を新たにつくり直すより低コスト。
山田隆司さんはシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)という、末梢神経の異常によって四肢の感覚と運動が徐々に失われていく病を抱えています。日本では病名はほとんど知られておらず、また見た目からでは疾患がわかりにくいため、理解が得られず、患者は孤独や不便さを強いられることが多いといいます。新居を建てるにあたり、幾多の建築会社の展示場を見たり、またプラン提案を受けたりしたものの、どれにも魅力を感じなかったという山田さん。ご自身の刻々と変わる身体の変化を見据えた、生活者目線の住宅づくりの提案がなかったからです。「いろいろ調べていて阿部建設のサイトにたどり着き、社長が車いすだと知ってますます興味をもったんです。実際にお会いしてみると、当事者にしかわからない微妙な部分も理解してくれ、互いに共感をもって話し合うことができました。私の感じているもどかしさや病気が進行していくことへの焦りもちゃんと理解したうえでアドバイスしてくれたんです。これは本当に嬉しかった」と山田さん。
じつは山田さんは、作業療法士。バリアフリーにも詳しく、ご自身の状態に合わせた家づくりを緻密に考えていました。「将来がとても不安でしたし、専門職の人間として、自分の家に完璧を求めていたのです」。廊下は広くして、スロープとエレベーターは絶対に必要で……などなど。「そんな私に阿部社長が、バリアは全部なくしてはいけない、と言うのです。いま歩けているのに、階段をなくすことで階段が上がれないようになってしまう、と。“バリアを残すバリアフリー” の考え方に、目から鱗が落ちる思いでした」。“これからできなくなること” ばかり考えて、“いまできること” を忘れるところだった。それに気づかされたことに、いまでも本当に感謝している、と山田さん。できるかぎり自立した生活を、と励まされたように感じたこのことを機に、家づくりが楽しいものに変化していったそうです。山田さんが将来、車いすが必要となったときには、廊下を広げ、エレベーターの設置が容易にできるよう、段階的バリアフリー計画のもと建築を進めました。先々への備えと、いまを楽しむゆとりと。どちらも視界に入れながらじっくりと検討し、最終的には70%ほどの完成度に抑えた家になりました。
山田さんの奥さまは言います。「家づくりは、こちらのくらしやすさやイメージをわかってもらえなければ何も始まりません。家事をしない人にキッチンの使い勝手についていくら説明してもピンとこないのと同じで、体に不自由さを抱えた生活のしづらさを最も理解できるのは、それを実感した人。あとはどれだけその人の生活をイメージできるかなんですね。そういう意味で阿部社長に出会えたのはラッキーでした。将来のことを決めつけずに、若いうちは柔軟にくらしを楽しんで、と言ってくれたことで、主人も私も気持ちがとても楽になったんです」。知識としてバリアフリーを学ぶことは簡単で、誰でもそのうわべを語ることはできます。けれど経験としてのバリアフリーは、当事者とその現場からしか学べないもの。「だから阿部社長は、バリアフリーの建築において貴重な存在だと思います」と山田さんは言います。
無垢の木の風合いを活かしたリビングは、雨の日も明るい気持ちになれるよう光を十分に採り入れて。
2方向から開閉できるトイレは広さ調節が可能。バリアフリーの観点からも、家庭内で広いトイレが必ずしも必要なわけではありません。
37歳で車いす生活者となった阿部建設5代目社長・阿部一雄。健常者と障がい者、期せずしてふたつの視点をもつことになったのはそのまま、建築士として他にない強みを得ることになりました。どちらの当事者でもあるからこそ、両者の間に入り、本人と家族にとって最も満足できる快適なくらしのプランを提示できる。そしてそれこそが、バリアフリーコーディネーターとしての真の役割だと考えます。さらに言えば、完全なバリアフリーではなく、あえて「バリアを残したバリアフリー」を提案したい。それは、自立や活力を促す、ポジティブな家づくりです。
健常者と障がい者、どちらも経験してきた車椅子の一級建築士だからこそ気づき、考え、実践することができる、本当の意味のバリアフリー住宅とは。阿部建設の5代目、阿部一雄が自らの半生を通じて描く、本当に大切なこと。
まずはご要望をお知らせください。バリアフリーコーディネーターが最適な設計をご提案いたします。
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